「石場建て」と「ホウ酸処理」
シロアリによる被害が増えたのはコンクリートの基礎が普及してからです。木造建築が健康だった「石場建て」の代わりを「ホウ酸処理」が担います。
かつての日本建築は石の上に木造の建物が乗っているだけでした。
「石場建て」と呼ばれますが、それ以前は「掘建て(立て)」といい、
地面に直接柱を埋めて建物を建てていました。
しかし、木の柱を接地していたら埋まっている部分や
地面の湿気を吸い上げた部分は腐ってしまったり、
シロアリに食われてしまい、耐久性がありません。
そのため地面と直接接しないよう石の上に建物を乗せることにしたのです。
世界最古の木造建築物として知られる法隆寺をはじめ、
現存する古い木造建築の多くは石場建てで建てられており、
その耐久性の高さは言うまでもありません。
お寺や神社だけでなく、庶民の住まいでも木造の家は数多く残されており、
古民家や京町家などはその代表例です。
少し前の日本では、木造住宅が100年以上もつのは当たり前でした。
「石場建て」の耐久性の高さは、
常に木部が外気に晒されていることにありました。
湿気をため込むことがなく、床下には常に風が吹き抜けていたわけです。
床下に限らず、室内でも隙間風が通り抜け、
建築そのものにも木や土、紙など呼吸する素材が使われていました。
表しの木はカラカラに乾燥し、腐朽菌もシロアリもお手上げでした。
シロアリに悩まされるようになったのは、
前の東京オリンピックの頃からと言われています。
きっかけとなったのは1950年に制定された建築基準法でした。
室戸台風や関東大震災の被害を教訓に、
コンクリートの布基礎に土台をボルトで固定することが義務付けられ、
建物は地面と緊結されることになったのです。
床下は閉ざされた空間となり、湿気をため込みことになります。
やがてシロアリの被害が頻発し、社会問題になりました。
こうして防腐・防蟻対策が義務化され、
農薬由来の合成殺虫剤が使用されるようになったわけです。
現在の家は、床下も建物もさらに気密化が進みました。
気密化が進めば進むほど問題になるのが湿気や結露の問題です。
そして、湿気や結露に曝された木部は腐れやシロアリを招きます。
しかし、住宅の高性能化はぐんぐん進むものの、
湿気や結露の問題は、前のオリンピックの時と同様、
後回しになっているのが現実です。
また、気密化が進んだ住まいに、揮発性があり、
再処理が必要な合成殺虫剤は馴染みません。
住む人や環境に悪影響が懸念されている合成殺虫剤に頼ることなく、
前と同じ轍を踏まないための一つの手段として、
私たちは「ホウ酸」が有効な解決手段だと考えています。
かつての「石場建て」の役割を果たせる方法、
それが、「ホウ酸による木材保存処理」であり、
住宅の性能が高まるほど、その必要性が増しているように思います。
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